ホームページの見積もりを何社かから取って比較するとき、最初に見るべきなのは金額ではなく、その金額に何が含まれているかです。
事業者の方から見積書を見せてもらうと、80万円と32万円が並んでいることがあります。
安い方に決めたくなるのは自然ですが、中身を読むと、そもそも別のものを見積もっている場合がほとんどです。
この記事では、複数の見積書を並べたときに確認したい項目を5つに絞って整理します。
- その見積もりは、同じ条件で出してもらったものか
- どこまでが料金に含まれていて、どこからが別料金か
- 公開したあとに毎月かかる分を足すと、順位は変わらないか
- できあがったものは、誰のものになるのか
- いつ公開できて、店側は何をいつまでに用意するのか
なお、見積書に並ぶ項目それぞれが何の作業に対する費用なのかは、費用の内訳を扱った以下の記事で説明しています。
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ここでは、比べるという場面に絞って書きます。
目次
その見積もりは、同じ条件で出してもらったものか
金額の差が大きいとき、まず疑うのは腕や良心ではなく、前提条件のズレです。
たとえばA社は10ページで原稿と撮影込み、B社は5ページで原稿は店側が用意、という前提で見積もっていれば、金額が倍近く違っても何もおかしくありません。
条件が違う見積書を並べても、高いか安いかは判断できません。
見積書を受け取ったら、金額欄より先に、前提条件や制作範囲が書かれた部分を探してください。
そこに次の項目が書かれているかを見ます。
- 制作するページ数と、それぞれのページ名
- 原稿を誰が用意するか
- 写真を誰が用意するか
- スマートフォン表示への対応が含まれるか
- 公開後に自分で更新する仕組みを入れるか
前提条件が書かれていない見積書は、比較の対象から一度外して、条件を明記して出し直してもらった方が早いです。
条件がバラつく原因のほとんどは、依頼するときの伝え方にあります。
電話や面談で口頭だけ伝えると、会社ごとに受け取り方が変わります。
依頼前に何を整理して伝えておくかは、それだけで長くなるので別の記事にまとめる予定です。
どこまでが料金に含まれていて、どこからが別料金か
同じ条件で出してもらった見積書でも、含まれる範囲は会社ごとに違います。
差が出やすいのは、次のあたりです。
| 確認すること | 見積書での書かれ方の例 |
|---|---|
| デザインの修正回数 | 「修正2回まで、3回目以降は1回2万円」 |
| 原稿の支給がなかった場合 | 「原稿支給を前提。制作会社が用意する場合は別途1ページ1万5千円」 |
| 撮影の点数 | 「撮影は半日、20カットまで」 |
| 公開後の文言修正 | 「公開1ヶ月以内の軽微な修正は無償」 |
| 写真素材やフォントの費用 | 「有料素材を使用する場合は実費」 |
この中でも、修正回数は先に確認しておいてください。
デザインの好みが固まっていない状態で始めると、修正の回数は簡単に増えます。
回数の制限が書かれていない見積書は親切に見えますが、あとから「これ以上は別料金です」と言われたときに、書面で確かめる材料がありません。
有料の写真素材やフォントを使う場合も、費用を誰が持つのか、契約が終わったあとも使い続けられるのかを聞いておくとよいです。
素材の使用許諾が制作会社に紐づいていると、あとで差し替えが必要になることがあります。
公開したあとに毎月かかる分を足すと、順位は変わらないか
見積書の比較でいちばん見落とされやすいのが、ここです。
初期費用の安い会社が、月額を高めに設定していることがあります。
逆に、初期費用は高いけれど公開後はほとんどかからない会社もあります。
数字を入れて比べてみます。
| 初期費用 | 月額 | 3年分の合計 | |
|---|---|---|---|
| A社 | 30万円 | 1万5千円 | 84万円 |
| B社 | 60万円 | 3千円 | 70万8千円 |
初期費用だけで並べるとA社が半額ですが、3年で見るとB社の方が13万円ほど安くなります。
どちらが正しいという話ではありません。
手元の資金が限られていて初期費用を抑えたい事情もありますし、月額に手厚い運用が含まれているなら、それは払う価値のある費用です。
大事なのは、月額に何が含まれているかを揃えてから足すことです。
サーバーの管理だけの月額と、毎月の更新作業まで含む月額を、同じ「月1万円」として比べても意味がありません。
見積書に「保守費 月額1万円」とだけ書かれているなら、その1万円で毎月何をしてもらえるのかを、作業の名前で出してもらってください。
運用や保守の契約で何を見るべきかは、別の記事で改めて書きます。
あわせて、ドメインとサーバーの契約を自分でするのか、制作会社を通すのかも確認してください。
制作会社を通す場合、実費に管理手数料が乗っているのが普通です。
できあがったものは、誰のものになるのか
金額の話に気を取られて飛ばされがちですが、あとで困るのはこの項目です。
まず著作権の話をします。
文化庁の「誰でもできる著作権契約マニュアル」には、著作物を創作した人が著作者となり、その著作者が著作権を持つこと、そして「依頼者が報酬を支払ったからといって、それだけで著作権を取得することにはなりません」と書かれています。
代金を払えば当然こちらのものになる、というわけではありません。
譲り受けるつもりなら、契約書にその取り決めが書かれている必要があります。
見積書に権利の記載がないのは珍しくないので、契約書か注文請書の段階で、次の3つを確認してください。
- 制作物の著作権を譲り受けるのか、使わせてもらう形なのか
- ドメインの登録者が、自分または自社の名義になっているか
- サーバーの契約者は誰で、管理画面のIDとパスワードを渡してもらえるか
ドメインの名義は、あとから制作会社を替えるときに効いてきます。
JPRSの案内によると、ドメインを管理する事業者を変更する手続きでは、登録者本人への意思確認と、認証コードのやり取りが必要になります。
手続き自体は用意されていますが、名義が制作会社になっていると、こちらの一存では動かせません。
もうひとつ、その制作会社との取引が続かなくなった場合も考えておいてください。
廃業や担当者の交代は、こちらの都合とは関係なく起こります。
ドメインが自分の名義であること、サーバーの管理画面に入れること、サイトのデータが手元にあること。
この3つが揃っていれば、別の会社に引き継いでもらえます。
揃っていないと、同じものをもう一度作り直すことになります。
権利の条項をどう書くかという個別の判断は、契約の中身によって変わります。
気になる条項があれば、契約する前に専門家か公的な相談窓口で見てもらってください。
いつ公開できて、店側は何をいつまでに用意するのか
見積書に納期が書かれていないことは、けっこうあります。
「2〜3ヶ月で公開」とだけ書かれている場合、その2〜3ヶ月が何を前提にした期間なのかを聞いてください。
原稿と写真が予定どおり揃った場合の期間であることが大半です。
制作が止まる原因は、制作会社側より、頼んだ側の準備にあることの方が多いと筆者は見ています。
だからこそ、スケジュールには店側の宿題とその期限も入れてもらってください。
「原稿の初稿を◯月◯日までに支給」と書いてあるだけで、忙しい時期でも手が動きます。
あわせて、公開が遅れたときの扱いも聞いておくと安心です。
店側の都合で長く止まったときに追加費用が発生するのか、料金は据え置きなのか。
開店に合わせて公開したいなど、動かせない日がある場合は、その日を最初に伝えてください。
期日が決まっているかどうかで、受けられる会社と受けられない会社が分かれます。
同じ土俵に載せてから比べる
5つを並べ直します。
条件が揃っているか、どこからが別料金か、公開後の費用まで足したらどうなるか、できたものは誰のものか、いつ公開できるか。
この5つを確認してから金額を見ると、最初に安く見えた見積書の順番が変わることがあります。
見積書は金額を知らせる紙ではなく、何をどこまでやってもらうかの合意の原型です。
その意味では、こうした質問に対してどう答えるかも判断の材料になります。
条件を書面にすることを面倒がらない会社は、作り始めてからのやり取りでも同じように書面を残してくれます。
出典
- 誰でもできる著作権契約マニュアル(PDF)|文化庁 ※令和4年度文化庁委託事業による改訂版
- ドメイン名の管理指定事業者の変更|JPRS